HOUSE ハウスの解説1(1977年 大林宣彦)

最終更新日 2016年7月6日 by Kazu

【解説】

『HOUSE』は1977年に公開されたホラー映画(劇場予告篇では「怪奇ファンタジー」と表現されている)で、テレビCMディレクターとして成功していた大林宣彦の劇場用映画デビュー作品です。

『HOUSE』は、映画会社に所属する人間だけが映画監督になれた当時の日本で、広告業界の人間が製作・監督しためずらしい作品。

 まだ駆け出しの女優だった池上季実子、デビューしたてのアイドル歌手大場久美子らが出演し、製作開始の2年前からさまざまな媒体で宣伝され、大ヒットしました。2009年に入ってからはアメリカ各地の映画館で初めて公開され始め、その独自の映画スタイルが注目されています。

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 ストーリーは、7人グループの女子中学生が夏休みを過ごしに、グループ内のオシャレ(ニックネーム)の伯母である羽臼香麗(はうす かれい)が1人で住む山奥の古い屋敷にやって来ます。そこでは彼女たちに次々と奇怪な出来事が降りかかるというもの。

 この女子中学生7人はお互いをニックネームで呼び合い、映画の中で名前は1度も出てきません(笑)。

 私が最初に観たときは登場人物のセリフが演劇的すぎて、観ているこちらが恥ずかしくなるようで最後まで鑑賞できるか不安になりましたが、すぐにその特異な映像から目が離せなくなりました。

 まず目に付くのは合成シーンがやたらと多いということです。普通ロケ撮影がされるような場面でもスタジオ撮影で、背景の山や空は絵が合成されています。また怪奇現象シーンでも一目で作り物とわかるような小道具が使われていたり、切り貼り合成などでコラージュのような表現をしています。なので映画全体にはリアリティは無く、ファンタジックな色彩が強いのが特徴です。二重写しのような美しい編集も素晴らしいです。

 またほとんどのシーンで音楽が使われていて、とってつけたようなセリフもミュージカルのような効果を生んでいます。

 音楽を担当した小林亜星、ミッキー吉野、ゴダイゴのポップな曲も映画の世界観に大きく影響しています。効果音もさまざまな音響や音声が複雑に重ね合わされていて、作り手が楽しみながら製作しているのが伝わってきます。

 そして、この映画の凄いところは全編にわたる疾走感です。オカルト的な表現や恐ろしいシーンが沢山でてきますが、どれも美しくて現実感が無くてナンセンスで、そのカオスな状態のままラストの羽臼香麗の「愛」についてのメッセージまで一気に駆けぬけるさまは一種恍惚とした気分になります。

 公開当時大ヒットした『HOUSE』ですが、その後の日本でのこの作品に対する評価は正直低いと思いました。むしろ海外の人には受け入れやすそうです。時間はかかりましたが、現状はそうなりつつあるようです。

 この映画の企画の発端は、CM撮影中の大林が東宝系列会社のある人物から、スピルバーグの『ジョーズ』のような映画を作ってほしいと持ち掛けられたことのようです。

 その後、大林の当時12歳の実娘から鏡の中の自分に襲われる話しを聞きそれがこの作品の元ネタになりました。

 また技術的なエピソードとしては、米パナビジョン社が1972年に発表し軽量で映画製作の効率に特化したパナフレックスカメラが、邦画において初めて『HOUSE』で使用されました。大林は海外でのCM撮影で以前からこのカメラを使っていたのです。

HOUSE ハウスの解説2に続く→

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