最終更新日 2016年7月7日 by Kazu
▲ネタバレを含みます
『ダイ・ハード』は、1988年公開のハリウッドのアクション映画。世界中で大ヒットし、主人公の刑事を演じたブルース・ウィリスがスターになった。監督は『プレデター』(’87)のジョン・マクティアナン。作品はシリーズ化された。
《あらすじ》
ニューヨーク市警のジョン・マクレーン(ブルース・ウィリス)は、クリスマス休暇を妻ホリー(ボニー・ベデリア)と2人の子供たちと過ごすためカリフォルニアへやってきた。ホリーは日本商社ナカトミの営業部長で、子供を連れてこの地に赴任していた。クリスマス・イブに開かれたナカトミ・プラザでのパーティーに招待されたジョンは、久しぶりに妻と再会した。
そのころ、ナカトミ・プラザには十数人の武装集団が大型トラックで近づいていた。このハイテク高層ビルには、現在パーティー関係者だけが残っていた。武装集団はまず警備室に侵入すると、ビル全体を封鎖した。そして、パーティ会場に銃を持って乱入し、社員と招待客30人ほどを人質に捕ってしまった。彼らのリーダーは、ハンス・グルーバー(アラン・リックマン)。元ドイツ系の民族解放組織の男で、狙いはこのビルの30階の金庫にある6億4千万ドルの債券だ。
ハンスはまず、金庫の暗証番号を言わないタカギ社長(ジェームズ・シゲタ)を射殺した。別室にいて難を逃れていたジョンは、自分の存在をハンスに勘づかれるが、探しに来た武装メンバーを殺し、そのうちの1人を巡回してきたパトカーの上に投げ落とした。パトカーに乗っていたパウエル巡査部長(レジナルド・ヴェルジョンソン)はロス市警に連絡、SWATが投入されるが作戦はことごとく失敗。後を引き継いだFBIは、テリスト対策のためビルの電源を落としたが、それによって金庫の最終ロックが外れて、ハンス一味は債券を手に入れた。ハンスはテレビ報道によってジョンとホリーが夫婦であることを知り、ホリーを連れて逃亡を図ろうとするが、そこへジョンが立ちはだかった。ハンスはホリーを盾にするが、ジョンに銃弾を打ち込まれ30階の窓から落下した。
全てが終わり地上に戻ったジョンとホリーだったが、まだ生きていた武装集団の1人、カール(アレクサンダー・ゴドノフ)が現れた。しかし、それを仕留めたのは子供を誤射して以来銃を撃っていなかったパウエル巡査部長だった。
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解説
■よくできたシナリオの勝利
この作品の状況設定はおもしろい。武装集団が大勢の人質を捕ってビルに立てこもる、そのビルを警察や特殊部隊が取り囲み交渉がはじまる。ここまではよくある話。しかし、ここにもう1つの要素かプラスされる。それは、まだ人質になっていない余計な人間(武装集団にとって)がビルの中に紛れ込んでいるのだ。その男は刑事で、ビルの中から無線機で外側の警官と交信する。しかもその無線機は武装集団から奪ったもので交信内容は筒抜け、刑事は武装集団を無線で挑発しつつ(観客を笑わせつつ)彼らの目的阻止をねらう。
また、さまざまな複線が張りめぐらされていて、それぞれキレイに落ちがつくのも特徴の1つ。例えば、冒頭の飛行機の中でのビジネスマンとの会話や妻が会社では旧姓を使っていることなど、後々重要な意味を持ってくるものがたくさん出てくる。
アクション映画は、どうしてもバイオレンスシーンにばかり目が行きがちで、『ダイ・ハード』以降より高い制作費のものやCGを駆使したものがいくつも登場したが、なかなかこの作品を超えられないというのは、このへんに理由がありそう。
■TV俳優からハリウッド・スターへ
TVシリーズ『こちらブルームーン探偵社』のコミカルな探偵、デビッド・アディスン役で名が知られていたブルース・ウィリスだったが、『ダイ・ハード』のマクレーン役は自分のイメージを変えるいいチャンスと捉えていたようだ。
ウィリスは、殆どの危険なアクションシーンを自分で演じたいと言った。その最たるものが、駐車場の天辺から下のエアバッグへのジャンプと同時に、背後で大爆発が起こるシーンである。
“できる限り自分でやれば画面に迫力が出る。つまり、代役を使ってないから危険なシーンでもカメラが寄れるんだ”
(映画パンフレット『ダイ・ハード』東宝出版事業室、1989)
ウィリスはそう言って、自分の能力を周囲のスタッフを見せつけた。彼はこの作品で一気にハリウッド・スターに上り詰めた。
■美しいアクションシーン、撮影ヤン・デ・ボンの出世作
シナリオの出来も良いが、やはりジョン・マクティアナン+ヤン・デ・ボンが捉えたこの作品のアクションシーンは素晴らしい。
それは特に後半に登場する2機のヘリが、猛スピードでビルとビルの間を縫うように飛行するところや、屋上でジョン・マクレーンの背後からヘリがぬっと現れるシーン、武装集団のリーダー、ハンスが30階の窓からぶら下がったままピストルをジョンに向けるスローモーションの顔アップなどである。
オランダ人撮影監督ヤン・デ・ボンの映像は、スケール感に美しさが同居しているのが特徴で、この作品のあと彼はハリウッドで引っ張りダコになった。ジョン・マクティアナンも映画の大ヒットで、アクション映画監督としての評価を決定的なものとした。
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[作品データ]
監督 ジョン・マクティアナン
脚本 スティーヴン・E・デ・スーザ、ジェブ・スチュアート
出演者 ブルース・ウィリス、アラン・リックマン、アレクサンダー・ゴドノフ、ボニー・ベデリア
音楽 マイケル・ケイメン
撮影 ヤン・デ・ボン