HOUSE ハウスの解説2(1977年 大林宣彦)

HOUSE ハウスの解説1からの続きです。

■活動写真の復活

『HOUSE ハウス』製作当時の大林宣彦は、映画についてこう考えていました。

 今の映画は映画本来の魅力を失っているのではないか。その魅力とは写真が動く(活動する)ことの驚きであったはずだ。しかし現在では写真が動く事など当たり前になってしまい、映画は文学や演劇で表現するようなより深いテーマを扱い始めた。そして動くという事の映画らしさが忘れられてしまっているのではないか。今の観客は実は本来の映画ではない別のものを見せられているのではないか。それでは映画が可哀想だと・・・。

 確かに『HOUSE ハウス』を観ると、映画創成期のころのサイレント映画に見られたような荒々しい映像表現で埋めつくされています。初めは唖然としながらも徐々に目が離せなくなる特異な表現です。

 観客は大林宣彦によって、文学でも演劇でも表現できない映画そのものを見せられていたようです。

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■映画製作前に放送されたラジオドラマ『HOUSE ハウス』

 ラジオドラマ『HOUSE ハウス』は、オールナイトニッポンの特別番組としてニッポン放送により1976年11月27日午前1時から午前5時の4時間枠の中で放送されました。

 この企画は、なかなか進展しない映画『HOUSE ハウス』の企画を東宝に何とか進めてもらおうと、大林宣彦自身が仕掛けたメディアミックスの一部でした。主なスタッフ、出演者は以下のとおりです。

ラジオドラマ『HOUSE ハウス』
演出・・・上野修、大林宣彦
構成・・・景山民夫
出演・・・木ノ内みどり、秋野陽子、岡田奈々、林寛子、      松本ちえ子、三木聖子、松原愛(映画にも出演)
語り・・・若山弦蔵
※特別番組の総合パーソナリティは堺正章

 

 番組はドラマ部分も含めて全て生放送で、ドラマのほか出演者のインタビューや歌、ゲストを招いてのオカルト話やリスナーの恐怖体験の投稿、そして極めつけは霊媒師が降霊実験をするコーナーで、そこでは松本ちえ子の亡くなった祖母の降霊が試みられたそうです!

 ストーリーも映画とはかなり違っていました。

 少女たちが通う学校には東郷ケイスケという臨時講師がやってきます。彼は授業の一環として古い家の実地研究調査を行うために7人の生徒を募集しますが、実はこの7人にはある共通の接点があることが後に分かってきます。

 少女たちが連れて行かれた古いレンガ造りの洋館で待っていたのは老婆でした。

 その老婆の話によると彼女にはかつて陸軍中尉の弟がいました。特攻隊に選ばれた彼は、戦闘機の故障のためパラシュートで脱出。怪我を負ってはいたが助かるはずだった彼は、その後さまざまな人々の誤解や手荒な扱いを受け亡くなってしまいます。

 実は調査のために選ばれた7人の少女とは、そのとき老婆の弟を葬った人間たちの子孫で、少女たちの選択は初めから仕組まれたものだったのです。

 そして、愛する弟を失った老婆の怨念が少女たちに襲いかかり少女たちは全員その洋館に食べられてしまいます。ところがその後、老婆の語っていた話が事実とは違っていたのではないかという若山弦蔵のナレーションが入るというもの。

 この番組は深夜にもかかわらず高い聴取率をあげました。そしてこの番組の放送後、ついに東宝が映画『HOUSE ハウス』の製作を正式に決定します。

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[作品データ]

監督 大林宣彦
脚本 桂千穂
出演者 池上季実子、大場久美子、松原愛、神保美喜、佐藤美恵子、宮子昌代、田中エリ子、南田洋子、鰐淵晴子、尾崎紀世彦
音楽 小林亜星、ミッキー吉野、ゴダイゴ
上映時間 88分