未知との遭遇の解説(1977年 スティーヴン・スピルバーグ)

【解説】

 今日は、スティーヴン・スピルバーグ監督の1977年公開、『未知との遭遇』を取り上げたいと思います。UFOが発する独特のメロディとともに、日本でも大ヒットしました。その影響かどうか判りませんが、このころから日本のテレビでUFO番組が盛んに作られるようになりました。

 この作品は宇宙人と人間との初めての接触を描いたものです。でもこれだけ聞くと、単なる子供だましの映画とも思えますよね。確かに綺麗なUFOがたくさん出てきますし、子供に夢を与える内容になっています。

 しかし、スピルバーグはハリウッドの映画監督ですが、とても作家性が強く、この映画には深いメッセージが込められていると思います。

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■特撮は『2001年宇宙の旅』のダグラス・トランブル

 この映画の特徴のひとつは、特殊撮影の素晴らしさです。手がけたのは、『サイレント・ランニング』(1972年)で監督デビューし、スタンリー・キューブリックの『2001年宇宙の旅』(1968年)で特撮を担当したダグラス・トランブル。

 UFO出現シーンでは、満天の星空と光をまとったUFOによって幻想的な雰囲気に包まれ、トランブルの技術とスピルバーグの巧みな演出で、子供以外でもワクワクできる映像になっています。

 その後トランブルは、リドリー・スコットの代表作『ブレードランナー』(1982年)でも特撮を担当します。

■UFO目撃によって人生を狂わされる人々

 一方でこの映画は、UFOに取りつかれた人々の人生というか生き様というか、そういったものも丹念に描いています。

 電気技師で5人家族で暮らしているロイは車を運転中に間近でUFOを目撃、それ以来UFOの魅力に取りつかれてしまいます。しかしそのときから、奇妙な形をした山の風景が頭に浮かんで離れません。悩んだロイはついに、周囲の眼も気にせずに狂ったように大量の土を家の中に持ち込み、その風景を再現しようとします。そして、変わり果てた夫に愛想をつかした奥さんと子供に逃げられてしまいます。

デビルスタワー(Devils Tower)
ロケ地のデビルスタワー(ワイオミング州)

 また別の目撃者のジリアンは、人気のない田舎でまだ幼い息子と2人きりで暮らすシングルマザー。しかしある日UFOがあらわれ、ひとり息子のバリーは連れ去られてしまいます。

 このように、UFOによって人生を狂わされ孤立してゆく人びと。しかしそれでも彼らは自らの生活をかえりみずに、UFOを追いかけ続けます。

 スピルバーグはそこに光をあてました。

 映画のラストでは、家族に捨てられ独りぼっちになったロイが、それでも笑顔で人生をかけた重大な決断をします。私はその場面で自分でも説明のできない不思議な感動を覚えました。

■元ネタはスピルバーグの幼少期の体験
スティーヴン・スピルバーグ
米国国防総省でスピーチするスピルバーグ(1999年)

 スピルバーグは、この作品を撮ろうと思った原点のような話をアメリカ版「プレイボーイ」誌に語っています。

 それは彼が5歳のとき、夜中に父親にたたき起こされてパジャマ姿のまま家族で車に乗って流星群を見に行った話です。そして、スピルバーグの両親は離婚しています。映画の中でも、家族と別れる前のロイが、夜中に家族を車に乗せてUFOを見に行く場面があります。

 この作品は、今となっては非常に多作の映画監督になったスピルバーグの、劇場用映画3作目にあたる作品です。初期スピルバーグの代表作だと思います。

■監修はアメリカ空軍で科学顧問を務めた人物

 この映画を監修したのは、アメリカの天文学者でUFO研究家のジョセフ・アレン・ハイネック博士(1910 – 1986)。

 彼は1947年から1969年までアメリカ空軍の下で、UFO目撃情報の調査を行う3つのプロジェクト(サイン、グラッジ、ブルーブック)の科学顧問を務めた人物です。

 彼はUFO目撃情報を分類し、この映画の原題、Close Encounters of the Third Kind(第三種接近遭遇)は、彼が提唱した用語です。第三種接近遭遇は、「UFOの搭乗者、宇宙人の目撃」と分類されています。

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[作品データ]

監督・脚本 スティーヴン・スピルバーグ
出演者 リチャード・ドレイファス、フランソワ・トリュフォー、テリー・ガー、メリンダ・ディロン
音楽 ジョン・ウィリアムズ
上映時間  135分