都会の孤独を描いた映画『タクシードライバー』のあらすじ(1976年 マーティン・スコセッシ)

最終更新日 2016年7月6日 by Kazu

《あらすじ》

5月10日、ニューヨークに流れ着いた元海兵隊のトラビス(ロバート・デ・ニーロ)は、自宅の安アパートで日記をつけていた。

「雨は人間のクズどもを舗道から洗い流してくれる」、これがその日の書き出しだった。そしてタクシードライバーの職を得たことを合わせて記した。

日が暮れて、ニューヨークの下町をタクシーで流し始めると、目に付くのは夜ごと徘徊するゴロツキどもだった。トラビスにとって彼らは悪そのものだった。

12時間働いたが眠気は起きなかった。仕方なく独りで小さなポルノ映画館に入るトラビス。売店の黒人女性に誘いを掛けてみたが大声を出されてしまう。トラビスは目の前の名も無い映画をぼんやり見つめながら、こんな毎日を過ごしていてはいけないと感じていた。

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ひし形1

ある日、パランタイン議員の選挙事務所に入っていく1人の女性がトラビスの目にとまった。彼女はこの掃きだめのような街の中で天使に見えた。

仕事の合間にカフェに立ち寄ると、ドライバー仲間が客の悪口を言いあっていた。トラビスは席につくと店内にいた態度の大きな黒人たちをしばらく睨みつけた。ドライバー仲間の1人が夜の貧民街でも客を乗せるトラビスに、拳銃がほしければ安く手に入るぜと声をかけてきた。しかし、それ以外はどうでもいいようなくだらない話ばかりだった。

次の日トラビスは、例の選挙事務所に行って昨日見かけた女性をコーヒーに誘ってみた。彼女は意外にもOKしてくれた。

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近くのカフェで彼女、べッツィ(シビル・シェパード)と向き合った。しかし、口下手で学の無いトラビスには会話を弾ませることはできなかった。そんなトラビスを見てべッツィは、クリス・クリストファーソンの歌にでてくる“歩く矛盾のような男”の話をした。

その後トラビスはべッツィに電話をかけ、映画を見に行く約束を取り付けた。その日の夜、偶然にもパランタイン議員が自分の車に乗り込んできた。トラビスは悪がはびこるこの街を掃除してくれと要望を出してみた。議員はトラビスの話を熱心に聞いているようだったが、それが上っ面だけの態度であることはトラビスにも分かった。

べッツィとの約束の日、トラビスが素の自分を知ってほしいと思って選んだのはいつも観ているポルノ映画だった。あきれたべッツィは途中で怒って帰ってしまった。トラビスは電話で必死に謝ったがべッツィはそのうち電話に出なくなった。やはり彼女もよそよそしく冷たい人間だったのだ。

業を煮やしたトラビスは直接選挙事務所に行くとべッツィに、「君のような人間は地獄に落ちろ」と吐き捨てた。

アパートに戻るとテレビでは、パランタイン議員が自分の掲げる政策を得意げに自画自賛していた。

ひし形1

数日後、タクシーで流すトラビスの前に1人の少女(ジョディ・フォスター)が飛び出してきた。慌ててブレーキを踏んだが、その少女は以前ポン引きの男に追われ自分のタクシーに乗り込んできた少女だった。「ここから逃げて」とそのとき彼女は言っていた。

いま目の前の彼女は、肌を露出した派手なファッションで仲間の少女と夜の街を歩き、見知らぬ男たちに声をかけていた。

トラビスはタクシーを走らせながら、いつまでたっても変わらない腐った社会と出口の見えない自分の孤独な境遇に、段々と煮詰まってゆくのを感じていた。

6月8日、トラビスは日記に「また人生の転機が来た」と書いた。そして拳銃の売人を乗せたドライバー仲間と待ち合わせると、自分もその車に乗り込んだ……

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[作品データ]

監督  マーティン・スコセッシ
脚本  ポール・シュレイダー
出演者 ロバート・デ・ニーロ、シビル・シェパード、ハーヴェイ・カイテル、ジョディ・フォスター、アルバート・ブルックス
音楽 バーナード・ハーマン
上映時間 114分