エクソシストの解説(1973年 ウィリアム・フリードキン)

【解説】

 今日は、神父と悪魔パズズの戦いを描いた73年公開のアメリカ映画『エクソシスト』を紹介しましょう。

 この映画は、リンダ・ブレアが演じる悪魔にとりつかれた12才の少女の凄まじい形相や言動が多くの人々にショックを与え、世界的なオカルト・ブームを巻き起こした作品です。

 監督は、前作『フレンチ・コネクション』でアカデミー賞を制覇したウィリアム・フリードキン。彼は『エクソシスト』でも得意のドキュメンタリー的な演出で、観客を恐怖のどん底に突き落としました。

 悪魔と言うと日本ではあまりピンときませんが、キリスト教信者の多い欧米でのショックは計り知れません。アメリカの映画会社は、わざとクリスマスの時期に公開するなどの念の入れようでした。

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■エクソシストとは?
フランシスコ・デ・ゴヤ  『悔悛しない瀕死の病人と聖フランシスコ・ボルハ』 1788年 350cm×300cm 油彩
ゴヤ 『悔悛しない瀕死の病人と聖フランシスコ・ボルハ』 1788年

 エクソシストとは、ウィキペディア(2014年9月30日閲覧)によると、カトリック教会においてはエクソシスムを行う人のことであり、エクソシスムとは、洗礼式の後に悪魔にとりつかれた人から、悪魔を追い出し正常な状態に戻すことであると説明されています。

 エクソシスムという言葉のもともとの意味は、ギリシャ語で「厳命によって追い出すこと」を意味しています。

■原作は実話「メリーランド悪魔憑依事件」がモチーフ

 原作者のウィリアム・ピーター・ブラッティがまだジョージタウン大学の学生だったころ、友人のイエズス会の神父トーマス・バーミンガムからワシントン・ポストのある記事を見せられました。

 そこには、メリーランド州の14歳の少年が悪魔にとりつかれ、神父によって助けられた話が載っていました。

 少年は普段と様子が変わり、卑猥な言葉を口にし表情や声が一変。体には焼き印のようなものが現れ、それは悪魔のような文字、数字、絵などであった。また、周囲ではポルターガイスト現象が起きていたというのです。

 その後、少年は神父から長時間のエクソシスム(悪魔祓い)を受け危機を脱したと言われています。この話はのちに「メリーランド悪魔憑依事件」と呼ばれるようになります。

 ブラッティは、少年の悪魔祓いをおこなったウィリアム・S・ボーデン神父と手紙をやり取りし、その中で神父は自分が関わった出来事は全て事実であると語ったそうです。

 バーミンガムは、この世の善と悪を見つめなおすべきだとブラッティにこの話の小説化をすすめました。

 1971年に出版された小説「エクソシスト」はベストセラーになり、ニューヨーク・タイムスのベストセラーリストには55週ランクインするほどでした。

 その後、ブラッティは「エクソシスト」を自ら映画化しようとします。主演は大物女優シャーリー・マクレーンの予定でした。ブラッティは小説を執筆する際、主役のクリス・マクニールはシャーリー・マクレーンをイメージしていたのです。しかし映画化交渉は失敗に終わり、権利はワーナー・ブラザースに売ってブラッティ自身はプロデューサーと脚本で映画製作に関わることになりました。

■異例のイラクロケが行われた

 この映画のオープニングは、イラクから始まります。メリン神父は考古学者でもあり、古代遺跡で発掘作業をしているという設定です。この撮影は、1972~73年にニネヴェの遺跡で知られるモースルにあるハドルという町で行われ、バース党が与党(大統領はアフマド・ハサン・アル=バクル)の時期でした。このハドルにある実際の発掘現場での撮影許可は異例なことでした。アメリカはイラクとは国交が無かったのでスタッフは全員イギリス人で、どこの国の政府の保護も無いままの撮影だったそうです。
 バース党が撮影許可の条件としたのは、イラク人をスタッフに加え撮影技術を伝授すること、もうひとつは撮影用の血の作り方を教えることでした(理由は不明)。フリードキンはそれに従い、当時のイラク国内の貴重な映像をフィルムに収めることに成功したわけです。

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[作品データ]

監督  ウィリアム・フリードキン
製作・原作・脚本  ウィリアム・ピーター・ブラッティ
出演者  リンダ・ブレア、エレン・バースティン、ジェイソン・ミラー、マックス・フォン・シドー、リー・J・コッブ
音楽  マイク・オールドフィールド、ジャック・ニッチェ
上映時間 122分