フレンチ・コネクションの解説(1971年 ウィリアム・フリードキン)

最終更新日 2016年7月6日 by Kazu

【解説】

本日紹介するのは、1971年公開のアメリカ映画『フレンチ・コネクション』です。これは名作の部類に入る重要な作品だと思いますが、なにせ40年以上も前の作品なので知らない人も多いと思います。

簡単にジャンル別けすれば刑事アクション物になるでしょう。しかし数ある刑事アクション物の中で、なぜこの映画を選んだのか?理由はそのすぐれたリアリティにあります。

■元ネタはノンフィクションのベストセラー小説

この作品の元になったのは、1969年に出版されベストセラーになったロビン・ムーアの同名ノンフィクション小説。内容はニューヨーク市警察本部薬物対策課のエドワード・イーガンとサルヴァトーレ・グロッソが、巨大麻薬ルート<フレンチ・コネクション>を捜査し撲滅したことを記録したものです。

その映画化権を買ったのはプロデューサーのフィリップ・ダントニで、彼は1968年にスティーブ・マックイーン主演の『ブリット』製作し大成功を収めた人物。

監督に選ばれたのは『真夜中のパーティー』(’70)で注目を浴びていたウィリアム・フリードキン。

ところが、フリードキンは原作の内容を気に入らず、直接イーガンとグロッソを取材をしました。これはTVドキュメンタリー出身のフリードキンならではの判断でしょう。イーガンとグロッソはこの作品の製作に全面的に協力し脇役で出演もしています。

本作品ではそうしたフリードキンの強みが遺憾なく発揮され、アカデミー賞で作品賞を含む5部門を受賞しています。彼はこの2年後に『エクソシスト』というホラー映画を世に送り出し、社会現象を巻き起こしました。そのフリードキンの出世作がこの作品です。

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■ニューヨーク警察が全面協力、現在では不可能な撮影が実現

映画はオール・ロケで、交通規制無しのぶっつけ本番の撮影も行われました。なのでたまたまそこを通りがかった一般人のびっくりしている様子や一般車両がたくさん写ってます(笑)。

ほとんどのアクションシーンが手持ちカメラで撮影され、俳優を追いかけているカメラマンの方がバテてしまうこともあったそうです。

また、バーでたむろするチンピラ達の生々しさも見ものです。演じているのは現職の黒人警官です。

このような撮影は現地のニューヨーク警察にイーガンの顔が利いたため可能になりました。

このようにフリードキンはドキュメンタリーの撮影手法を貫き、それまでの刑事アクション映画を超えるリアリティを獲得しました。

■驚きのエンディング手法

▲ネタバレを含みます

そして最大の驚きがエンディングです。なんと事件は解決しないのです。ただ登場人物たちのその後の運命が淡々とテロップで流されるのみ。

このエンディングで、この作品は単なるエンターテイメントの枠を超えたように思えました。現在のハリウッド映画を見慣れていた私は、呆然と画面を見つめるしかありませんでした。リアルが凝縮された素晴らしい結末だと思いました。

この斬新なラストシーンのアイデアは、その後さまざまな映画で真似されました。代表的なのはジョージ・ルーカス監督の『アメリカン・グラフィティ』(1973年)です。

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[作品データ]

監督 ウィリアム・フリードキン
脚本 アーネスト・タイディマン
原作 ロビン・ムーア
出演者 ジーン・ハックマン、ロイ・シャイダー、フェルナンド・レイ、マルセル・ボズッフィ、トニー・ロビアンコ
音楽 ドン・エリス
上映時間 104分